東日本大震災からまもなく7年を迎えようとしています。
特に、福島県の農業に関しては、福島第一原発事故の影響で、今でも、いわゆる風評被害が続いている、という人もいるし、風評は払しょくされたという人もいるし・・・いったいどっちなのでしょうか・・・。私は、この点に関しては、「風評被害を飛び越えた。」と思っています。「飛び越えた」とは、一見「解決した」と思われがちですが、ここでいう「飛び越えた」とは、「風評被害の次の次元に至った」ということです。福島県産の農産物から放射能が検出されなくなったことは、今はほとんどの日本人が分かっています。なのに、相変わらず、福島県産の特に「米」は一般市場ではあまり見かけることはありません。風評被害の原因が、放射能にあったとすれば、その放射能の懸念がなくなった今、風評被害も消え、福島県の米も市場に出回るはずです。しかし、現実は、この辺がミスマッチになっています。
ということは、風評被害のレベルではなくなった・・ということになります。
では、次の次元に至ってしまった原因は、何なのでしょうか?それは、一度ついた「マイナスイメージ」はなかなか、拭い去ることは難しいということです。特効薬がない、ということです。私たち、福島県の農業者は、放射能の懸念がなくなれば風評被害もなくなるものと思い努力してきましたが、現実はそうではなかった、であれば、私たちは、次に何を努力すれば良いのでしょうか?この辺の結論が見いだせないところがやっかいな所です。従って、福島の問題は、今後も長い時間がかかる、と予想せざるを得ません。唯一、思いつく解決の方向と言えば、やはり、福島県農業者と全国の消費者とが直接結びつく、いわゆる「顔の見える関係」をひとつひとつ作っていくしかないように思えるのです。顔の見える関係があれば、そこにマイナスイメージとか、不信感はなくなりますから。
私が代表をつとめさせていただいている、NPO法人がんばろう福島、農業者等の会では、震災直後から「顔の見える関係に風評被害はなし!」をモットウに活動を続けてきました、7年が過ぎる今でも、いや、かえって今になって、この言葉はうなずけると自負しています。
日本の食料流通は、JAや生協、巨大なスーパーのように、なかなか消費者から生産者が見えずらい、顔の見える関係が構築しにくい、構造が中心となっています。ここからは、福島の問題を解決する糸口を見出すのは難しい、と思えます。巨大流通が、福島県の農産物を積極的に取り扱ってくれ、どこでも福島県の農産物が目に付く状況ができれば、それは、特効薬的な効果があるのでしょうが、なかなか、そのような状況を惹起するのは難しいような。
NPOでは、顔の見える関係をつくっていくために、ネットショップでの直販、毎月300人へのセット野菜販売、毎月1000人近くの企業CRSとのつながり、ねだんのない八百屋、キリスト教会を中心とした直販活動、スタディファームへの年間1000人を超える参加受入、そして、藤沢市のエシカル市場での販売などの活動を行っており、7年すぎて、これらが点から線に結び付いてきた感触を得ています。今後もこれらの輪を広げていく考えです。あと30年くらい。
2018年1月16日
特定非営利活動法人がんばろう福島、農業者等の会
農業生産法人 二本松農園 両代表 齊藤登
- 2018/01/16(火) 23:22:08|
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昨日から、特に福島県の農産物をめぐり議論になっているようです。
私は、「安全」と「安心」は違うと思います。特に震災後6年を迎えた福島県では。
安全は、その作物の物理的安全性を意味しています。
放射能・農薬・化学肥料・・・・
これは、特に福島県の場合クリアされてきています。
でも、福島県産の農産物は相変わらず敬遠されている部分がある。いわゆる風評被害。
これは「安心」の領域にまだ達していないからです。
いちどついてしまった福島県農産物に対する「マイナスイメージ」。
「福島県の農産物は放射能が出ないとは、分かっているが・・・なんとなく・・・」
私はこれを「なんとなく症候群」とも呼んでいます。
なんとなく症候群がやっかいなのは、特効薬がない、というところです。
ここに、現在の風評被害対策の難しさ、があります。
治療は・・・・「顔の見える関係には風評被害はなし」
農家と消費者との顔の見える関係を、地道につくっていくこと、
システム的につくっていくこと・・だと思います。
2016年3月9日
NPO法人がんばろう福島、農業者等の会
農業生産法人㈱二本松農園
代表 齊藤登
- 2017/03/09(木) 15:43:17|
- 震災
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・・・あの未曾有の超巨大地震が起こる2年前、その福島に小さな農産物直売所が1つオープンしました。・・・
波に呑み込まれながら一進一退を繰り返す毎日。・・・
震災からまもなく6年。NPO法人がんばろう福島、農業者等の会は、現在52の農家で販売活動等を行っていますが、
その会員のひとり・・この方は、震災前から、福島県郡山市で農産物直売所を営んでいました。
この本は、その小さな直売所店長の物語です。
波乱にとんだ日々をブログにしていましたが、このほど、それが本になりました。
この時期、全国の皆様にぜひ読んでいただきたい本として、ご紹介させていただきます。
(NPO法人がんばろう福島、農業者等の会 理事長 齊藤登)
書籍タイトル:味つけは農家がしてくれる~立志篇~
著者名:大澤秀城
発売日:2017/2/20
出版社:日本橋出版
https://nihonbashi-pub.co.jp/
販売ページ:Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4908862079
- 2017/03/05(日) 11:04:29|
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